楽典 UNIT 13
移調楽器
Transposing Instruments
4
主な移調管
B♭管
最重要
実音
計算目標
10問
演習問題数
この単元について
移調楽器は「楽譜の音(記音)」と「実際に聞こえる音(実音)」が異なる楽器。スコアリーディング・管弦楽法の基礎として音楽大学受験に頻出する中級の重要単元。
この単元で身につけること
- ●「記音」と「実音」の概念と違いを説明できる
- ●B♭管楽器(クラリネット・トランペット)の移調方向を計算できる
- ●E♭管(アルトサックス)とF管(ホルン)の移調を計算できる
- ●調号の変換(記音の調→実音の調)が正確にできる
- ●スコアを見て移調楽器の実音を読み取る基礎力が身につく
学習の進め方
1
移調楽器とはタブで「記音」「実音」の概念を理解(10分)
2
B♭管楽器タブで最重要の変換を徹底練習(15分)
3
E♭管・F管タブとホルンの計算を確認(10分)
4
演習10問 → 添削課題提出(15分)
受験での重要度:高
スコアリーディング問題・管弦楽編曲問題で毎年出題される。B♭管は長2度↓(記音→実音)が最頻出。ホルン(F管)の完全5度↓も要確認。調号の変換(♯♭の個数が変わる)を忘れずに。
スコアリーディング問題・管弦楽編曲問題で毎年出題される。B♭管は長2度↓(記音→実音)が最頻出。ホルン(F管)の完全5度↓も要確認。調号の変換(♯♭の個数が変わる)を忘れずに。
移調楽器とは(なぜ移調するか)
楽器の構造上、楽譜に書かれた音と実際に鳴る音が異なる楽器を「移調楽器」という。なぜこのような仕組みになったのかを理解することが大切。
記音と実音の違い
記音(Written Pitch)
楽譜に書かれた音。奏者が「C(ド)」と読む音。運指・指使いの基準となる。
実音(Sounding Pitch)
実際に聞こえる音。Concert Pitch(コンサートピッチ)とも。ピアノのCと同じ音高。
移調楽器の例:B♭管クラリネット
奏者が楽譜の「C(ド)」を押すと、実際に出る音は「B♭(シ♭)」。奏者はピアノの「C」と同じ指使いで覚えているが、実際に鳴る音は違う。
奏者が楽譜の「C(ド)」を押すと、実際に出る音は「B♭(シ♭)」。奏者はピアノの「C」と同じ指使いで覚えているが、実際に鳴る音は違う。
なぜ移調楽器が存在するか
① 楽器の構造上の理由:
管楽器は管の長さによって基音が決まる。B♭管クラリネットはB♭音が最も安定して鳴りやすい構造を持つ。
② 運指の統一のため:
サックス(ソプラノ・アルト・テナー・バリトン)は全て異なる調(B♭・E♭・B♭・E♭)だが、全て同じ指使いで演奏できる。これにより複数の楽器に持ち替えが容易。
③ 歴史的経緯:
19世紀以前の管楽器はキーが少なく、特定の調でしか演奏できなかった。複数のサイズの楽器を用意することで異なる調に対応した。その名残が現代の移調楽器表記に残っている。
管楽器は管の長さによって基音が決まる。B♭管クラリネットはB♭音が最も安定して鳴りやすい構造を持つ。
② 運指の統一のため:
サックス(ソプラノ・アルト・テナー・バリトン)は全て異なる調(B♭・E♭・B♭・E♭)だが、全て同じ指使いで演奏できる。これにより複数の楽器に持ち替えが容易。
③ 歴史的経緯:
19世紀以前の管楽器はキーが少なく、特定の調でしか演奏できなかった。複数のサイズの楽器を用意することで異なる調に対応した。その名残が現代の移調楽器表記に残っている。
スコアリーディングでの重要性:オーケストラや吹奏楽のスコア(総譜)を読む際、移調楽器の記音を実音に変換する必要がある。指揮者・作曲家・アレンジャーにとって必須の知識。
移調楽器の一覧(全体把握)
| 楽器 | 調 | 記音→実音 | 実音→記音 |
|---|---|---|---|
| B♭クラリネット | B♭管 | 長2度↓ | 長2度↑ |
| トランペット(B♭) | B♭管 | 長2度↓ | 長2度↑ |
| ソプラノサックス | B♭管 | 長2度↓ | 長2度↑ |
| テナーサックス | B♭管 | 長9度↓(1オクターブ+長2度) | 長9度↑ |
| アルトサックス | E♭管 | 長6度↓ | 長6度↑ |
| バリトンサックス | E♭管 | 長13度↓ | 長13度↑ |
| ホルン(F管) | F管 | 完全5度↓ | 完全5度↑ |
| E♭クラリネット | E♭管 | 短3度↑(!逆向き) | 短3度↓ |
B♭管楽器(最重要)
クラリネット・トランペット・ソプラノサックスなど最も多くの楽器が属するB♭管。記音と実音の関係を確実にマスターする。
B♭管の基本ルール
記音 → 実音
長2度 ↓
楽譜より長2度低い音が鳴る
実音 → 記音
長2度 ↑
実音より長2度高く楽譜に書く
記音→実音の計算例
記音 C
→ 長2度↓ →
実音 B♭
(ドを吹くとシ♭が鳴る)
記音 D
→ 長2度↓ →
実音 C
(レを吹くとドが鳴る)
記音 G
→ 長2度↓ →
実音 F
(ソを吹くとファが鳴る)
記音 A
→ 長2度↓ →
実音 G
(ラを吹くとソが鳴る)
実音→記音の計算例
実音 C
→ 長2度↑ →
記音 D
(ドを鳴らすにはレを書く)
実音 F
→ 長2度↑ →
記音 G
(ファを鳴らすにはソを書く)
調号の変換(B♭管)
B♭管の記音の調は実音の調より♯が2つ多い(または♭が2つ少ない)。
| 実音の調 | → | 記音の調 | 調号の変化 |
|---|---|---|---|
| C長調(♯♭なし) | → | D長調(♯2個) | ♯が2個増える |
| F長調(♭1個) | → | G長調(♯1個) | ♭1個→♯1個 |
| B♭長調(♭2個) | → | C長調(♯♭なし) | ♭が2個減る |
| E♭長調(♭3個) | → | F長調(♭1個) | ♭が2個減る |
受験ポイント:「B♭管楽器の楽譜はC長調(調号なし)で書かれていても、実際に聞こえるのはB♭長調(♭2個)」。これは最頻出パターン。記音D長調(♯2個)→実音C長調(♯♭なし)も重要。
B♭管楽器の一覧
| 楽器 | 移調方向 | 備考 |
|---|---|---|
| B♭クラリネット | 長2度↓ | 最も代表的なB♭管楽器 |
| B♭トランペット | 長2度↓ | 吹奏楽・オーケストラの主役 |
| ソプラノサックス | 長2度↓ | ジャズで活躍 |
| テナーサックス | 長9度↓(1オクターブ+長2度) | ジャズのテナー奏者 |
| コルネット(B♭) | 長2度↓ | ブラスバンドで使用 |
E♭管・F管・その他の移調楽器
アルトサックス(E♭管)とホルン(F管)は受験頻出。移調方向をしっかり覚えること。
E♭管楽器(アルトサックス)
記音 → 実音
長6度 ↓
楽譜より長6度低い音が鳴る
実音 → 記音
長6度 ↑
実音より長6度高く楽譜に書く
記音 C
→ 長6度↓ →
実音 E♭
(ドを吹くとミ♭が鳴る)
実音 C
→ 長6度↑ →
記音 A
(ドを鳴らすにはラを書く)
調号の変換(E♭管アルトサックス):記音の調は実音の調より♭が3個多い(♯が3個少ない)。
| 実音の調 | → | 記音の調(アルトサックス) |
|---|---|---|
| C長調(♯♭なし) | → | A長調(♯3個) |
| F長調(♭1個) | → | D長調(♯2個) |
| B♭長調(♭2個) | → | G長調(♯1個) |
F管楽器(ホルン)
記音 → 実音
完全5度 ↓
楽譜より完全5度低い音が鳴る
実音 → 記音
完全5度 ↑
実音より完全5度高く楽譜に書く
記音 C
→ 完全5度↓ →
実音 F
(ドを吹くとファが鳴る)
記音 G
→ 完全5度↓ →
実音 C
(ソを吹くとドが鳴る)
実音 C
→ 完全5度↑ →
記音 G
(ドを鳴らすにはソを書く)
調号の変換(F管ホルン):記音の調は実音の調より♯が1個多い(♭が1個少ない)。
| 実音の調 | → | 記音の調(ホルン) |
|---|---|---|
| C長調(♯♭なし) | → | G長調(♯1個) |
| F長調(♭1個) | → | C長調(♯♭なし) |
| B♭長調(♭2個) | → | F長調(♭1個) |
ホルンの特殊性:ホルンは歴史的にスコアでは無調号で書かれ、調性を「in F」「in E♭」などと別途指定することが多かった。現代のスコアでは適切な調号で書くことが増えている。
E♭クラリネット(特殊・逆方向)
E♭クラリネットは記音より短3度高い実音が出る(他の多くの移調楽器と逆方向)。
記音C → 実音E♭ではなく、記音C → 実音E♭(短3度↑)
※ 実際は「E♭管楽器の中で記音が低く設定されている」と理解するとよい
記音C → 実音E♭ではなく、記音C → 実音E♭(短3度↑)
※ 実際は「E♭管楽器の中で記音が低く設定されている」と理解するとよい
移調計算の手順(まとめ)
試験本番で使える計算の手順を整理する。音名の変換と調号の変換の2ステップが基本。
ステップ1:移調楽器の種類を確認
| 楽器の種類 | 記号/表記 | 記音→実音の方向 | 音程 |
|---|---|---|---|
| B♭管(クラリネット等) | in B♭ | ↓ | 長2度↓ |
| E♭管(アルトSax等) | in E♭ | ↓ | 長6度↓ |
| F管(ホルン) | in F | ↓ | 完全5度↓ |
| E♭クラリネット | in E♭ (Cl) | ↑(逆!) | 短3度↑ |
ステップ2:音名を変換する
例:B♭管クラリネットの記音「E(ミ)」を実音に変換
① E から長2度下 = D(レ)
② 答え:実音は D(レ)
① E から長2度下 = D(レ)
② 答え:実音は D(レ)
例:ホルン(F管)の記音「A(ラ)」を実音に変換
① A から完全5度下 = D(レ)
② 答え:実音は D(レ)
① A から完全5度下 = D(レ)
② 答え:実音は D(レ)
ステップ3:調号を変換する(旋律全体の場合)
例:B♭管クラリネットの楽譜が「D長調(♯2個)」のとき、実音の調は?
① B♭管は記音が実音より長2度高い
② D長調の主音D から長2度下 = C
③ 答え:実音は C長調(♯♭なし)
① B♭管は記音が実音より長2度高い
② D長調の主音D から長2度下 = C
③ 答え:実音は C長調(♯♭なし)
| B♭管(長2度↓) | E♭管(長6度↓) | F管(完全5度↓) | |
|---|---|---|---|
| 記音の調号の変化 | ♯+2(♭−2) | ♯+3(♭−3) | ♯+1(♭−1) |
| 実音→記音の変換 | ♯増・♭減 | ♯増・♭減 | ♯増・♭減 |
計算の確認方法:変換した後、「楽器名 in ○○」の「○○」と同じ音が記音Cのときの実音になっているか確認する。B♭管なら記音C→実音B♭、F管なら記音C→実音F、E♭管なら記音C→実音E♭となれば正しい。
まとめ早見表
| 楽器 | 記音C→実音 | 実音C→記音 | 記音C長調→実音調 |
|---|---|---|---|
| B♭クラリネット | B♭ | D | B♭長調 |
| B♭トランペット | B♭ | D | B♭長調 |
| アルトサックス(E♭) | E♭ | A | E♭長調 |
| ホルン(F管) | F | G | F長調 |
演習問題(10問)
移調楽器の記音・実音変換の問題です。8問以上で添削課題へ進んでください。
添削課題(単元13)
紙に答えを書いて写真撮影後、LINEで「楽典 単元13」と明記して提出してください。
提出方法:① A4白紙に問題番号と答えを記入 ② スマホで撮影 ③ LINEの「課題提出」メニューから送信
問1 — B♭管の記音→実音(10点)
次の記音をB♭管クラリネットの実音に直せ(各1点):
① C ② G ③ E ④ B ⑤ F♯ ⑥ A ⑦ D ⑧ E♭ ⑨ A♭ ⑩ B♭
① C ② G ③ E ④ B ⑤ F♯ ⑥ A ⑦ D ⑧ E♭ ⑨ A♭ ⑩ B♭
各1点。変化音の書き忘れに注意。
問2 — F管(ホルン)の実音→記音(10点)
次の実音をホルン(F管)の記音に直せ(各2点):
① C ② G ③ D ④ A ⑤ E
① C ② G ③ D ④ A ⑤ E
各2点。
問3 — アルトサックスの調変換(10点)
アルトサックス(E♭管)の楽譜にC長調(調号なし)で書かれた旋律を実音で演奏すると、実際に聞こえる調はどの調か答えよ。また、記音C(ド)の実音は何か答えよ。(各5点)
調名5点・実音5点。
問4 — 移調楽器一覧表(10点)
移調楽器一覧表を作成せよ。楽器名・調・記音→実音の移調方向・実音→記音の移調方向を含めること(最低4楽器)。
各楽器2.5点(4楽器×2.5点)。調号の変化も書ければ加点。
問5 — 移調楽器の存在理由(10点)
なぜ移調楽器が存在するかを、以下の2点から説明せよ:
① 歴史的背景(楽器の発達と運指の統一)
② 現代的意義(スコアリーディング・管弦楽法との関係)
① 歴史的背景(楽器の発達と運指の統一)
② 現代的意義(スコアリーディング・管弦楽法との関係)
①5点・②5点。
採点基準(講師用)
問配点合格目安主な失点パターン
問1 B♭管変換10点8点変化音の書き忘れ
問2 F管変換10点8点完全5度の計算ミス
問3 E♭管調変換10点8点記音Cが実音E♭と誤解
問4 一覧表10点7点移調方向の上下を誤る
問5 存在理由10点6点「運指の統一」に言及なし
合計50点40点以上で次単元へ