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楽典 UNIT 18

ナポリ六

Neapolitan Sixth

⏱ 学習目安 50分 📝 演習 10問 ✏️ 添削課題 50点 ⭐ 重要度 高
♭II6
記号
短調
使用調
S機能
和声機能
10問
演習問題数
この単元について
ナポリ六は上級和声の代表的な借用和音。短調で頻繁に登場し、音楽大学の和声課題・楽典分析問題の必須知識。
この単元で身につけること
  • ナポリ六の定義(♭II度・第1転回形)を正確に説明できる
  • ハ短調・ト短調・ニ短調のナポリ六の構成音を即答できる
  • 典型進行(♭II6→V7→i)の各声部の動きを説明できる
  • 楽曲分析でナポリ六を見つけ、記号(♭II6 / N6)を書ける
学習の進め方
1
ナポリ六とはタブで定義と構成を確認(15分)
2
ハ短調での例タブで構成音を暗記(10分)
3
和声進行楽曲例タブで実用的な使い方を学ぶ(15分)
4
演習10問添削課題提出(10分)
受験での重要度:高
ナポリ六は上位校の和声分析問題で必ず問われる。分析記号(♭II6 または N6)と「バス音が第3音」という転回形の把握が最重要。楽譜中の調号外臨時記号(例:ハ短調でのD♭音)がナポリ六のサインであることを覚えよう。
ナポリ六の定義
短調の♭II度の大三和音を第1転回形(第3音がバスに来る形)で使ったもの。記号は ♭II6 または N6。
なぜ「ナポリ六」という名前か
「ナポリ」の由来
18世紀のナポリ楽派(スカルラッティ、ペルゴレージ等)がこの和音を特徴的に多用したことから命名された。「ナポリ六度和音」とも呼ぶ。
「六」の意味
数字付き低音記号で第1転回形を「6の和音」と表す慣習から。バス音から上の音まで6度の音程が生じるのが由来。
ナポリ六の構成原理
要素内容ハ短調の例
♭II度短調の第2音を半音下げた大三和音D♭大三和音(D♭-F-A♭)
基本形♭II度の和音(バス音 = 根音)D♭-F-A♭(バス:D♭)
ナポリ六第1転回形(バス音 = 第3音)F-A♭-D♭(バス:F)
記号♭II6 または N6N6 / ♭II6
なぜ大三和音(長3度)なのか
♭IIの和音を構成する場合:
例(ハ短調):♭II = D♭-F-A♭
  ・ D♭→F = 長3度(4半音)
  ・ D♭→A♭ = 完全5度(7半音)
∴ 大三和音(長3度 + 完全5度)となる。

これは自然短音階の♭IIがたまたま大三和音になるためで、短調独自の和声的個性。
♭IIと ♭II6の違いを確実に
♭II(基本形):バス音がD♭(根音)→ D♭-F-A♭
♭II6(ナポリ六):バス音がF(第3音)→ F-A♭-D♭
「六」= 第1転回形。バス音に注目することがポイント。
ハ短調でのナポリ六
ハ短調(調号♭3つ:B♭・E♭・A♭)を例に、ナポリ六の構成音と特徴を詳しく確認する。
ハ短調の主要和音とナポリ六
和音ローマ数字構成音(低音順)特徴
主和音iC-E♭-G短三和音・トニック
下属和音ivF-A♭-C短三和音・サブドミナント
属和音VG-B♮-D大三和音・ドミナント
ナポリ六♭II6(N6)F-A♭-D♭大三和音・第1転回形・S機能
D♭が調号外の臨時記号!
ハ短調の調号にD♭は含まれない(B♭・E♭・A♭の3♭)。楽譜にD♭の臨時記号が出てきたら、ナポリ六のサインだと疑おう。これが楽曲分析で見つける最大のヒント。
各短調のナポリ六早見表
調♭II(根音)ナポリ六の構成音(低音順)調号外の音
ハ短調(c)D♭F - A♭ - D♭D♭
ト短調(g)A♭C - E♭ - A♭A♭
ニ短調(d)E♭G - B♭ - E♭E♭
イ短調(a)B♭D - F - B♭B♭
ホ短調(e)FA - C - FC・F(調号♯1のため)
覚え方のコツ:ナポリ六の根音(♭II)は短調の主音の半音上
ハ短調→主音C、半音上→D♭ ✓ ト短調→主音G、半音上→A♭ ✓
第1転回形なので根音より長3度上の音がバス音になる(C短 → バス F)。
和声進行への組み込み方
ナポリ六はサブドミナント機能を持ち、Vへ進行する。典型的な進行パターンと声部連結の規則を習得する。
典型的な進行パターン
進行機能の流れ備考
♭II6 → V7 → iS → D → T最も典型的・受験頻出
iv → ♭II6 → V → iS → S代理 → D → Tivから連続するパターン
i → ♭II6 → V → iT → S → D → T短い進行でよく見られる
♭II6 → I6/4 → V → iS → T(装飾) → D → T四六和音を経由する形
声部連結の規則
バス声部(最重要)
♭II6のバス音(第3音)は
半音上行してVの第5音へ解決
例:ハ短調
 F(♭II6のバス)→ G(Vの第5音 D-B-G の最上音ではなくV和音G-B-Dのうちのルートへ)
上声部(注意点)
D♭(♭II6の根音)は上方・下方どちらへも動ける
4声配置では重複音に注意:♭II6は3音なので必ず1音を重複する→通常は第3音(バス音)以外を重複
ハ短調での♭II6→V7→iの4声配置例
♭II6(F-A♭-D♭)→ V7(G-B♮-D-F)→ i(C-E♭-G)
ソプラノ:D♭ → D → C (下行)
アルト: A♭ → B♮ → G (半音上行→下行)
テノール:F → F → E♭ (保留→下行)
バス:  F → G → C  (上行半音→完全4度上行)
バス音の半音上行が核心
♭II6 → V の連結で最も重要なのはバス音の動き。F→Gの半音上行がナポリ六特有の「切なさ」と強い推進力を生む。この声部進行を楽譜で確認できるようにしておこう。
楽曲例とポイント
ナポリ六は多くの作曲家が愛用した。代表的な使用例と分析のポイントをまとめる。
有名な使用例
作曲家・曲名箇所効果
ベートーヴェン
「月光ソナタ」第1楽章
主要部の終止直前哀愁・緊張感を高める
ショパン
バラード・前奏曲
クライマックス付近ドラマチックな解決感
シューベルト
歌曲
歌詞の感情的クライマックス悲嘆・憂愁の表現
モーツァルト
ニ短調ピアノ協奏曲
短調楽章のカデンツ前強烈な終止感の演出
分析問題でナポリ六を見つけるコツ
手順1
調号外の臨時♭記号を探す:ハ短調ならD♭、ト短調ならA♭ など
手順2
バス音を確認:♭II6のバス音は第3音(長3度上)。ハ短調ならF
手順3
直後にVが来るか確認:♭II6 → V という進行であればほぼ確定
手順4
記号を書く:♭II6 または N6(どちらも正解として認められる)
ナポリ六 vs サブドミナント(iv)の比較
iv(短調のSd)
構成音(ハ短調):F-A♭-C
バス音:F(根音)
響き:素直なサブドミナント
調号内の音のみで構成
♭II6(ナポリ六)
構成音(ハ短調):F-A♭-D♭
バス音:F(第3音)
響き:より深い哀愁・異国情緒
D♭という調号外の音を含む
受験でよく出る記述問題
「ナポリ六の特徴を述べよ」という問いには:①♭II度の大三和音の第1転回形、②サブドミナント機能、③短調で多用、④バス音が半音上行してVに解決、⑤名称の由来(ナポリ楽派) — これら5点を押さえておけば完璧。
演習問題(10問)
ナポリ六の定義・構成・進行・分析に関する問題。8問以上で添削課題へ進んでください。
添削課題(単元18)
紙に答えを書いて写真撮影後、LINEで「楽典 単元18」と明記して提出してください。
提出方法:① A4白紙に問題番号と答えを記入 ② スマホで撮影 ③ LINEの「課題提出」メニューから送信
問1(10点)
ハ短調・ト短調・ニ短調のナポリ六の構成音(低音から順に)を全て答えよ。
各調3点(構成音3音が全て正解で満点)+残り1点は加点。
問2(10点)
ハ短調で「♭II6-V7-i」の進行を4声(ソプラノ・アルト・テノール・バス)で配置し、各声部の音を書け。(※記譜でも音名でも可)
各和音の声部が正しく答えられていれば各3点、声部進行の規則性(バスの半音上行)記述2点。
問3(10点)
ナポリ六のバス音の解決規則(半音上行してVの第5音へ)を、ハ短調の例(F→G)を使って説明せよ。
規則の説明5点、ハ短調での例示5点。
問4(10点)
ナポリ六(♭II6)とiv(短調のサブドミナント)を和声的に比較せよ。機能・響き・使われ方の違いを述べよ。
機能の比較4点、響きの違い3点、具体的使われ方の違い3点。
問5(10点)
楽曲中にナポリ六が現れたときの分析記号(♭II6またはN6)の書き方と、その和音を見分けるコツ(調号外臨時記号)を説明せよ。
記号の説明3点、見分け方のコツ(臨時♭の観察)4点、バス音確認手順3点。
採点基準(講師用)
配点合格目安主な失点パターン
問1 構成音10点8点転回形にせず基本形で答える
問2 4声配置10点7点バス声部の半音上行を忘れる
問3 解決規則10点8点「第5音へ」の部分が曖昧
問4 比較10点7点機能が同じS機能と書けない
問5 分析記号10点8点臨時記号の意味を説明できない
合計50点40点以上で次単元へ