音楽受験対策オンライン塾 楽典教材 単元11 / 全22単元 目次へ
楽典 UNIT 11

非和声音

Non-chord Tones

⏱ 学習目安 60分 📝 演習 10問 ✏️ 添削課題 50点 ⭐ 重要度 高
7
非和声音の種類
経過音
最重要
準備
識別の鍵
10問
演習問題数
この単元について
非和声音(Non-chord Tones)は和音の構成音ではないが旋律や声部を装飾する音。楽曲分析・対位法・和声法の必須知識。
この単元で身につけること
  • 7種類の非和声音(経過音・刺繍音・掛留音・倚音・逃音・先取音・保続音)を識別できる
  • 各非和声音の拍位置(強拍・弱拍)と準備の有無を正確に答えられる
  • 4-3懸垂・9-8懸垂・7-6懸垂の意味と解決パターンを説明できる
  • 楽譜内の非和声音を発見し、種類を正しく分類できる
  • ドミナントペダルとトニックペダルの違いと効果を説明できる
学習の進め方
1
経過音・刺繍音タブで基本の非和声音を習得(15分)
2
掛留音・倚音タブで強拍の非和声音を理解(10分)
3
識別のポイントタブで分類法を整理(10分)
4
演習10問添削課題提出(25分)
受験での重要度:高
楽曲分析問題で「この音は何か」と問われる頻出テーマ。特に掛留音とその記号(4-3・9-8・7-6)は詳しく出題される。経過音と刺繍音の区別も必須。
経過音・刺繍音(弱拍の非和声音)
どちらも弱拍位置に置かれる。最も頻繁に現れる基本の非和声音。
経過音(Passing Tone / PT)
経過音(Passing Tone)
2つの和声音を順次進行(2度移動)でなめらかにつなぐ非和声音。弱拍位置に置かれる。
和声音 経過音 和声音 (両側が和声音・順次進行)
上行経過音の例:
C major の I(C-E-G)から IV(F-A-C)への進行で、
G(ソ)→ A(ラ)※非和声音 → B(シ)→ C(ド)
AはI和音にもIV和音にも属さないが、G→A→B→Cを順次進行でつなぐ

下行経過音の例:
E(ミ)→ D(レ)※非和声音 → C(ド)
Dは中間を埋める経過音
経過音の特徴チェック
① 両隣が和声音か? ② 順次進行(2度)か? ③ 弱拍か? → 3つYESなら経過音
刺繍音(Neighbor Tone / NT)— 上・下刺繍音
刺繍音(Neighbor Tone / Auxiliary Note)
和声音から隣の非和声音へ移動し、元の和声音に戻る。上刺繍音・下刺繍音の2種類。弱拍位置。
和声音 刺繍音(隣音) 同じ和声音 (往復する)
上刺繍音(Upper NT)
C(ド)→ D(レ) → C(ド)
和声音より1度上の音へ移動して戻る
下刺繍音(Lower NT)
E(ミ)→ D(レ) → E(ミ)
和声音より1度下の音へ移動して戻る
経過音と刺繍音の比較
特徴経過音刺繍音
拍位置弱拍弱拍
前後の音両側が異なる和声音前後が同じ和声音
動きの方向一方向(上行または下行)往復(出て戻る)
識別の決め手通過する→経過音戻ってくる→刺繍音
対位法での重要性
2声対位法の練習では経過音と刺繍音を正しく使うことが評価される。経過音は強・弱どちらの拍でも使えるが、強拍の経過音(「Accented Passing Tone」)は特別な扱い。試験では「弱拍の経過音」を基本として覚える。
掛留音・倚音(強拍の非和声音)
強拍位置に置かれる非和声音。特に掛留音は「準備→掛留→解決」の3段階が必須。
掛留音(Suspension / Sus)
掛留音(Suspension)— 準備が必要な強拍非和声音
前の和音の音を強拍まで引き延ばし(または再攻撃し)、次の和音と衝突させてから下行解決する。
準備(弱拍) 掛留(強拍) 解決(弱拍) (下行解決が原則)
主要な掛留音の種類
記号名称掛留音→解決先例(ハ長調 V→I)
4-3四三懸垂4度音→3度音へ下行F(ファ)→ E(ミ)/ 掛留音がIの4度
9-8九八懸垂9度音→8度音へ下行D(レ)→ C(ド)/ 掛留音がIの9度(オクターブ上の2度)
7-6七六懸垂7度音→6度音へ下行B(シ)→ A(ラ)/ IV和音上で使われる
2-3二三懸垂2度音→3度音へ下行(例外)最低声部の掛留。上行方向に解決
4-3懸垂の詳細例(最頻出)
C major: V(G-B-D)→ I(C-E-G)の進行で…
準備(弱拍):上声部に F(ファ)が現れる(IV和音かV和音の構成音として)
掛留(強拍):和声がIに変わっても F が持続 ← ここが「非和声音」
解決(弱拍):F(ファ)が下行して E(ミ)へ → Iの3度音に解決
記号:「4-3」= Iの根音から4度上(F)が3度上(E)へ
倚音(Appoggiatura)
倚音(Appoggiatura)— 準備なしの強拍非和声音
掛留音と同じ強拍位置・下行解決だが、「準備」がない。前の拍で同じ音を置かず、突然強拍に置かれる。
[準備なし] 倚音(強拍・突然) 解決(弱拍・下行)
掛留音と倚音の違い — 試験頻出
掛留音:前拍に同じ音が準備として置かれる → 「準備あり」
倚音:突然強拍に現れる → 「準備なし」
どちらも強拍に置かれ、下行解決するが、準備の有無で判別する。
ロマン派音楽での倚音
倚音はロマン派(特にショパン・シューマン)のメロディーに豊富に使われ、感傷的・歌謡的な表情を作る。バッハのコラールでは掛留音が体系的に使われている。
逃音・先取音・保続音
残り3種類の非和声音。それぞれ特徴的な動きを持つ。
逃音(Escape Tone / Échappée)
逃音(Escape Tone / Échappée)
和声音から順次進行で非和声音へ移動し、その後「跳躍」して次の和声音へ向かう。逃げるように跳躍するのが特徴。
和声音 →(順次)→ 逃音 →(跳躍)→ 和声音
例:
E(ミ)→ F(ファ)← 逃音 → D(レ)(跳躍)
E→Fは順次進行、F→Dは3度跳躍(跳躍)
F はC major のI和音(C-E-G)の外の音 = 非和声音
先取音(Anticipation)
先取音(Anticipation)
次の和音の構成音を弱拍に先取りして鳴らす。その音は次の和音が来たとき「和声音」になる。
和声音 先取音(弱拍) 次の和音の同音(持続)
例:
V(G-B-D)→ I(C-E-G)の進行で…
Vの最後の弱拍に C(ド)← 先取音 が現れる
Cは次のI和音の根音を先取り。次の拍でI和音になると「和声音」になる

・弱拍・目立たない・次の和音への橋渡し
保続音(Pedal Point / Orgelpunkt)
保続音(Pedal Point)
1つの声部(特に最低音部)で和声進行が変わっても同じ音を持続させる技法。オルガンのペダル音に由来。
ドミナントペダル
Vの音(ソ)を最低部で持続
上声部でI・IV・V等が進行
→ 強い緊張感・クライマックス
ベートーヴェン等で頻出
トニックペダル
Iの音(ド)を最低部で持続
上声部でV・IV等が動く
→ 安定した土台・牧歌的
バロックの通奏低音で多用
保続音は「非和声音」になるとき:
最低部の持続音が、上声部の和音に含まれない期間が「非和声音状態」。
例:低部ド(C)が続く中で上声部がV(G-B-D)を鳴らす → CはV和音の外の音 = 保続音(非和声音として機能)
受験で問われる保続音の問題
①「この声部で持続している音は何か」
②「ドミナントペダルとトニックペダルの違いは何か」
③「保続音が非和声音として機能するのはどんなとき?」
非和声音の識別法
7種類を確実に識別するための系統的な手順と一覧表。
識別フローチャート
Step 1: その音は和音の構成音か?
→ 和声音なら非和声音ではない。構成音外の音のみ以下に進む
Step 2: 強拍か弱拍か?
強拍 → 掛留音(準備あり)or 倚音(準備なし)の2択
弱拍 → 次のステップへ
Step 3(弱拍の場合): 前後の音との関係は?
両側が異なる和声音で順次進行 → 経過音
前後が同じ和声音(往復) → 刺繍音
順次進行→跳躍で次の和声音へ → 逃音
次の和音の音を先取り → 先取音
Step 4: 保続音の確認
1声部が和声進行と関係なく同音を持続 → 保続音
7種類の非和声音まとめ表
種類英語名拍位置準備解決方向特徴
経過音 Passing Tone 弱拍 不要 一方向(上 or 下行) 両側が異なる和声音
刺繍音 Neighbor Tone 弱拍 不要 元の音へ戻る 前後が同じ和声音
掛留音 Suspension 強拍 必要 下行解決 準備→掛留→解決の3段階
倚音 Appoggiatura 強拍 なし 下行解決 突然強拍に置かれる
逃音 Escape Tone 弱拍 不要 跳躍して解決 順次進行→跳躍の組み合わせ
先取音 Anticipation 弱拍 不要 次の和音で同音 次の和音の音を先取り
保続音 Pedal Point 強・弱両方 持続 1声部が同音を持続
試験で迷ったときの最終判断法
1. 強拍か弱拍かを確認 → 強拍なら掛留音か倚音
2. 準備があるかを確認 → 準備あり=掛留音、準備なし=倚音
3. 弱拍なら前後の動きのパターンで判断(通過/往復/跳躍/先取り)
掛留音の「数字」の読み方
4-3:低音からの4度(掛留)→ 3度(解決)
9-8:低音からの9度(掛留)→ 8度(解決) ※9度 = オクターブ上の2度
7-6:低音からの7度(掛留)→ 6度(解決)
2-3:最低声部の掛留。2度→3度へ(例外的に上行解決)
演習問題(10問)
非和声音の種類・掛留音・識別の問題です。8問以上で添削課題へ進んでください。
添削課題(単元11)
紙に答えを書いて写真撮影後、LINEで「楽典 単元11」と明記して提出してください。
提出方法:① A4白紙に問題番号と答えを記入 ② スマホで撮影 ③ LINEの「課題提出」メニューから送信
問1 — 非和声音の一覧表(10点)
次の7種類の非和声音を表にまとめよ:
種類名(日本語)・英語名・拍位置(強/弱)・準備の有無・解決方向・最大の特徴
対象:経過音・刺繍音・掛留音・倚音・逃音・先取音・保続音
各種類1.5点(計10.5点 → 10点満点に丸める)。
問2 — 非和声音の種類特定(10点)
次の音がどの非和声音に当たるか答えよ(各2点)。
① 強拍・準備なし・下行解決
② 弱拍・両隣が異なる和声音・順次進行
③ 弱拍・前後が同じ和声音・往復する動き
④ 弱拍・次の和音の音を先取りして鳴らす
⑤ 1声部が和声進行と無関係に同音を持続
各2点。
問3 — 掛留音の種類(10点)
4-3懸垂・9-8懸垂・7-6懸垂のそれぞれについて、以下を答えよ。
① 「数字」の意味(低音からの度数)
② 掛留音が解決する音程
③ 準備→掛留→解決の流れ(ハ長調の例音名で)
各3点強(3種類×3点=9点、残り1点はボーナス)。
問4 — 経過音と刺繍音の比較(10点)
経過音と刺繍音の違いを以下の3点の観点から比較説明せよ。
① 拍の位置(どちらが強拍か弱拍か)
② 前後の音との関係(和声音との位置関係)
③ 動きのパターン(一方向か往復か)
各観点3点+1点サービス=10点。
問5 — 保続音(ペダルポイント)(10点)
保続音(ペダルポイント)について以下を答えよ。
① 定義(どの声部が何をするか)
② ドミナントペダルとトニックペダルの違い(持続する音と上声部の関係・音楽的効果)
③ 保続音が「非和声音」として機能するのはどんなときか
①3点・②4点・③3点。
採点基準(講師用)
配点合格目安主な失点パターン
問1 一覧表10点8点倚音と掛留音の混同
問2 種類特定10点8点先取音・逃音の混同
問3 掛留音10点7点数字の意味(度数)の誤解
問4 比較10点7点「往復」という表現が書けない
問5 保続音10点7点D/Tペダルの効果説明不足
合計50点40点以上で次単元へ