楽典 UNIT 20
和声分析発展
Advanced Harmonic Analysis
総合
分析手法
副D
副ドミナント
転調
転調分析
10問
演習問題数
この単元について
単元09〜19で学んだ個別技法を統合し、実際の楽曲を分析する総合力を養う。副ドミナント・転調分析・シーケンスは受験上位校の必須知識。
この単元で身につけること
- ●副ドミナント(V/X)の記号と構成音をどの調でも求められる
- ●ピボット和音を使った転調分析ができる(二段記号の書き方も)
- ●シーケンス(模進)・和声リズム・半音階的進行を識別できる
- ●楽曲の一節を見て、全ての和音にローマ数字と機能を付与できる
学習の進め方
1
副ドミナントタブで V/X の考え方を習得(20分)
2
転調の分析タブでピボット和音を学ぶ(20分)
3
複雑な進行・実践タブで総合力を確認(20分)
4
演習10問 → 添削課題提出(20分)
受験での重要度:高
副ドミナントの分析記号(V7/IV, V7/V等)と転調のピボット和音分析(二段ローマ数字)は上位校で必出。楽曲分析問題では「臨時記号の音が副ドミナントのサイン」を意識することが最初のステップ。
副ドミナントの分析記号(V7/IV, V7/V等)と転調のピボット和音分析(二段ローマ数字)は上位校で必出。楽曲分析問題では「臨時記号の音が副ドミナントのサイン」を意識することが最初のステップ。
副ドミナント(Secondary Dominant)
ある和音(I以外)を一時的にIとみなして、その「臨時のV7」として機能する和音。転調はしない。
副ドミナントの定義と記号
定義:ある和音Xを「臨時のトニック」とみなして、Xへ解決するV7を作る。
記号:V7/X と書く(「XへのV7」と読む)
特徴:
① 実際には転調しない(一時的な「ミニ終止感」だけ生まれる)
② 調号外の臨時記号が現れる(これが副ドミナントのサイン)
③ 解決先のXは主調のII〜VII度(Iには向かわない)
記号:V7/X と書く(「XへのV7」と読む)
特徴:
① 実際には転調しない(一時的な「ミニ終止感」だけ生まれる)
② 調号外の臨時記号が現れる(これが副ドミナントのサイン)
③ 解決先のXは主調のII〜VII度(Iには向かわない)
ハ長調の主な副ドミナント一覧
| 記号 | 読み方 | 構成音(ハ長調) | 解決先 | 臨時記号 |
|---|---|---|---|---|
| V7/V | VのV7 | D7(D-F♯-A-C) | G(V) | F♯ |
| V7/IV | IVのV7 | C7(C-E-G-B♭) | F(IV) | B♭ |
| V7/ii | iiのV7 | A7(A-C♯-E-G) | Dm(ii) | C♯ |
| V7/iii | iiiのV7 | B7(B-D♯-F♯-A) | Em(iii) | D♯, F♯ |
| V7/vi | viのV7 | E7(E-G♯-B-D) | Am(vi) | G♯ |
副ドミナントを見つける手順
① 楽譜中に調号外の臨時記号(♯や♭)を見つける
② その音が含まれるV7形の和音(長3度+完全5度+短7度)を確認
③ 次の和音(解決先)を確認してV7/Xの記号を書く
例:ハ長調でF♯が出現 → D7(D-F♯-A-C)→ G へ解決 → V7/V
① 楽譜中に調号外の臨時記号(♯や♭)を見つける
② その音が含まれるV7形の和音(長3度+完全5度+短7度)を確認
③ 次の和音(解決先)を確認してV7/Xの記号を書く
例:ハ長調でF♯が出現 → D7(D-F♯-A-C)→ G へ解決 → V7/V
副ドミナントの効果
転調との違い:副ドミナントは「一時的な強調」であって転調ではない。
解決後すぐに主調の進行に戻れる(転調すると新調でしばらく続く)。
音楽的効果:
・特定の和音を「特別に際立てる」ドラマチック効果
・局所的な緊張と解決感(「ミニカデンツ」)を生む
・単調になりがちな進行に色彩を加える
解決後すぐに主調の進行に戻れる(転調すると新調でしばらく続く)。
音楽的効果:
・特定の和音を「特別に際立てる」ドラマチック効果
・局所的な緊張と解決感(「ミニカデンツ」)を生む
・単調になりがちな進行に色彩を加える
転調の分析
楽曲が別の調に移る「転調」を分析する手法。ピボット和音(共通和音)を使った近親調転調が最重要。
転調分析の基本概念
ピボット和音とは
転調前の調でも転調後の調でも機能する和音。
「つなぎ役」として両調に属する。
分析記号:
旧調ローマ数字
─────────
新調ローマ数字
「つなぎ役」として両調に属する。
分析記号:
旧調ローマ数字
─────────
新調ローマ数字
新調の確認方法
① 調号外の臨時記号を探す
② 新調のV(属和音)を見つける
③ 新調のV→Iの終止を確認
④ ピボット和音を遡って探す
② 新調のV(属和音)を見つける
③ 新調のV→Iの終止を確認
④ ピボット和音を遡って探す
ハ長調→ト長調の転調分析例
進行: C(I)→ G(V)→ Am(vi)→ [ピボット和音] → D7(V7/ト)→ G(I/ト)
ピボット和音を探す:
Am(A-C-E)= ハ長調では vi
Am(A-C-E)= ト長調では ii
→ Am がピボット和音(vi / ii)
分析記号:
Am の上に「vi」、その下に「ii」と二段に書く
その後は全てト長調のローマ数字で続ける
ピボット和音を探す:
Am(A-C-E)= ハ長調では vi
Am(A-C-E)= ト長調では ii
→ Am がピボット和音(vi / ii)
分析記号:
Am の上に「vi」、その下に「ii」と二段に書く
その後は全てト長調のローマ数字で続ける
遠隔調転調(ピボット和音が難しい場合)
| 転調の種類 | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 近親調転調 | ピボット和音(共通和音)経由 | 自然・なめらか |
| 共通音転調 | 1〜2音だけ共通する音を保留 | 少し唐突 |
| 異名同音転調 | 同じ音を別の調の音として再解釈 | 劇的な響き |
| 直接転調 | ピボットなし・直接新調へ | 最も驚き的 |
近親調の優先順位
試験では近親調転調が圧倒的に多い。近親調とは:属調(1♯多い)、下属調(1♭多い)、平行調(同じ調号)、同主調(同じ主音)の4種類。まずこれらのピボット和音を探すこと。
試験では近親調転調が圧倒的に多い。近親調とは:属調(1♯多い)、下属調(1♭多い)、平行調(同じ調号)、同主調(同じ主音)の4種類。まずこれらのピボット和音を探すこと。
複雑な和声進行の読み方
シーケンス(模進)・和声リズム・半音階的進行など、実際の楽曲に登場する複雑な要素を識別する。
シーケンス(模進)
定義:同じ音程パターンを一定の音程差で繰り返す技法
和声シーケンスの例(5度下行、ハ長調):
ii7(Dm7)→ V7(G7)→ I(C)→
vi7(Am7)→ II7(D7)→ V(G)→
IV(F)→ VII(B dim)→ III(Em)→ ...
このように各和音が5度ずつ下行(または4度上行)するパターンはバロック・古典期の定番。
分析のヒント:似たようなリズム・音形が繰り返される部分を見つけたら模進を疑う。
和声シーケンスの例(5度下行、ハ長調):
ii7(Dm7)→ V7(G7)→ I(C)→
vi7(Am7)→ II7(D7)→ V(G)→
IV(F)→ VII(B dim)→ III(Em)→ ...
このように各和音が5度ずつ下行(または4度上行)するパターンはバロック・古典期の定番。
分析のヒント:似たようなリズム・音形が繰り返される部分を見つけたら模進を疑う。
和声リズム(Harmonic Rhythm)
| 和声リズム | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 速い | 1拍ごとに和音が交替 | 緊張感・スピード感 |
| 普通 | 1小節ごとに交替 | バランス良い進行 |
| 遅い | 2〜4小節ごとに交替 | 広大さ・安定感 |
| 加速(増密) | 終止に向かって速くなる | 最もドラマチック |
半音階的進行(Chromatic Harmony)
半音階的バス(Chromatic Descending Bass):
バスが半音階的に下行する進行。哀愁・悲嘆の感情表現として古来から使用。
例(ハ短調):i → i6/♮7♭ → VI → V4-3 → i
バス:C → B → B♭ → A♭ → G → ...
半音階的和声の意義:
・各声部が半音で動くことで色彩豊かな和声変化
・調性が曖昧になる効果(後期ロマン派への橋渡し)
バスが半音階的に下行する進行。哀愁・悲嘆の感情表現として古来から使用。
例(ハ短調):i → i6/♮7♭ → VI → V4-3 → i
バス:C → B → B♭ → A♭ → G → ...
半音階的和声の意義:
・各声部が半音で動くことで色彩豊かな和声変化
・調性が曖昧になる効果(後期ロマン派への橋渡し)
分析時の注意
複雑な進行を分析するとき、まず「大きな流れ(T→S→D→T)」を把握してから細部を見る。シーケンスは同じ形の繰り返し、副ドミナントは臨時記号、転調は新しいVの出現が目印。
複雑な進行を分析するとき、まず「大きな流れ(T→S→D→T)」を把握してから細部を見る。シーケンスは同じ形の繰り返し、副ドミナントは臨時記号、転調は新しいVの出現が目印。
実践・総合分析のポイント
和声分析の正確な手順と、楽曲を見た際に系統立てて分析するための実践ガイド。
和声分析の手順(系統的アプローチ)
第1步
調の確定:調号を確認 → 長調か短調か判断 → 主音を確定
第2歩
終止を確認:完全終止・半終止・偽終止・変格終止を探す
第3歩
臨時記号を確認:調号外の音 → 副ドミナントか転調かを判断
第4歩
全和音にローマ数字:機能(T/S/D)と転回形(6・6/4・7等)も記入
第5歩
特殊和音の特定:借用和音・ナポリ六・増六和音・副ドミナントを記す
分析記号チートシート
| 記号 | 意味 | 例(ハ長調) |
|---|---|---|
| I, II, III... | 主調のローマ数字(大文字=長、小文字=短) | I=C大、vi=Am |
| I6, I6/4 | 転回形(6=第1転回、6/4=第2転回) | I6=E-G-C |
| V7 | 属七和音(V+短7度) | G7(G-B-D-F) |
| V7/IV | 副ドミナント(IVへのV7) | C7→F |
| N6 / ♭II6 | ナポリ六(短調のみ) | 単元18参照 |
| It+6 / Ger+6 | 増六和音の種類 | 単元19参照 |
| [♭VII] | 借用和音(角括弧) | B♭大三和音 |
連続5度・連続8度は最重要禁則
バッハ式4声コラール和声では連続5度(parallel fifths)・連続8度(parallel octaves)は厳禁。分析だけでなく和声課題作成時にも必ず確認すること。声部進行の誤りは大きな減点要因。
バッハ式4声コラール和声では連続5度(parallel fifths)・連続8度(parallel octaves)は厳禁。分析だけでなく和声課題作成時にも必ず確認すること。声部進行の誤りは大きな減点要因。
演習問題(10問)
副ドミナント・転調分析・シーケンス・和声リズムに関する問題。8問以上で添削課題へ。
添削課題(単元20)
紙に答えを書いて写真撮影後、LINEで「楽典 単元20」と明記して提出してください。
提出方法:① A4白紙に問題番号と答えを記入 ② スマホで撮影 ③ LINEの「課題提出」メニューから送信
問1(10点)
ハ長調で V7/vi(ローマ数字)の構成音を示し、どの和音に解決するかを説明せよ。
構成音の正確な記述5点、解決先の説明5点。
問2(10点)
「模進(シーケンス)」とは何かを説明し、ii7-V7-I を5度ずつ下行させた例(ハ長調→ヘ長調→変ロ長調)を書け。各段の構成音も示すこと。
定義の説明4点、各段の和音名6点(2点×3)。
問3(10点)
次の進行のピボット和音を分析せよ:ハ長調から出発して「I - IV - vi - [ピボット] - V7 - I(ト長調)」に転調する場合のピボット和音はどれか。両調でのローマ数字を示せ。
ピボット和音の特定5点、両調でのローマ数字表記5点。
問4(10点)
副ドミナント V7/IV(ハ長調)の構成音を示し、IV(F和音)への解決を4声(ソプラノ・アルト・テノール・バス)で書け(各声部の音名を記入)。
構成音4点、4声の解決6点(声部ごとに1.5点)。
問5(10点)
バッハのコラール和声において「連続5度禁止・連続8度禁止」がなぜ重要かを音響的観点と歴史的観点から説明せよ。
音響的観点5点(倍音・空洞感)、歴史的観点5点(対位法の規則・バッハの伝統)。
採点基準(講師用)
問配点合格目安主な失点パターン
問1 副ドミナント10点8点構成音の臨時記号を間違える
問2 模進10点7点5度下行の和音名が不正確
問3 ピボット10点7点二段ローマ数字の書き方が不明確
問4 4声解決10点7点V7/IVの構成音(B♭)を忘れる
問5 禁則の理由10点6点音響的理由の説明が浅い
合計50点40点以上で次単元へ